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オヤヂライキュア備忘録

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サドハドレド出陣 二話

 窓のカーテンから朝の光が漏れる頃、セミダブルのベッドに三人が川の字で寝ているところを、物音を立てないよう配慮して訪れた者がいた。
 小柄な体格に、むき出しのエリートアルコントリブヌスチェーンフルセットが、身につける者の愛らしい顔つきと似合っていない。

 執事にパンと果物が入った籠を渡すと、自ら小さく灯った暖炉にもってきた鍋をかけ、蓋をとって軽くかき混ぜる。ほんわりと湯気が広がっていく。
 その匂いに反応して、小さくうなり、寝返りをうったのが星剣だった。
 妹の様子に目元を緩め、暖炉の前のチェアにとすんと身を任せると、改めて三人の寝顔に見入る。
 星織の執事が暖炉の前に座る訪問者にお茶のもてなしをすると、紅茶の薫りがまた寝ている者を刺激する。

 むくりと身を起こしたのはやはり星剣だった。
 目をこすりながら薫りの元を探す。
 暖炉の前に座る姉を認めると、慌てて隣で寝ている別の姉を起こしにかかる。
「織姉ちゃん、雪姉ちゃんが来てるよ!」
 悲鳴にも似た星剣の声に反射的に身を起こした星織は、未だ寝ている星弓を乗り越えてベッドからころげるように這い出る。
「どどど…どうかしたの? あ、お、おはようございます、雪姉ちゃん」
 寝癖の髪を手串で梳かそうとしているが、目的は達せられていない。
 星織の慌てる様を口元で笑って、星雪は紅茶を含む。
「霞に朝ご飯を託されたので持ってきた」

 垂れ目のピンクの瞳と愛らしい顔つきに似合わない、ぶっきらぼうな言葉に星雪を知らない者は違和感を覚えるだろうが、星族、特に星雪にディーバレベルの近い兄弟達はその洗礼を受けているため、星雪の姿を認めると背筋が伸びる思いがある。
 星織も星雪の洗礼を十二分に受けた一人だった。

「霞姉ちゃんが朝ご飯作ってくれたんだ? 持ってきてくれてありがとう~」
 星雪の穏やかそうな様子に安心し、星織は緊張を解く。
 のは、少し早かった。
「執事に聞いたけど、昨日、ドレド、キル数僅差勝ちなんだって?」
 淡白に訪ねる声が逆に怖い。
 星織は硬直し、青ざめて、おびえた視線で星雪を伺い見る。
「どうせ、お前が解除なりヒールなり立ち位置、判断ミスしたんだろう?」
 罪状を適切に読み上げる星雪に、星織はうめき声を上げるしかなかった。
「朝食取ったら決闘二百本だな」
 星雪はらんらんと瞳に戦意を滾らせた。
 がっくりと肩を落とし、星織はしばらく沈黙した後、
「はぃ…特訓ありがとうございます…」
 引きつった笑顔を無理矢理作り、やっとの思いで星織は返事をする。

 昨日のドレドの戦況を思い出すと、これも自分の為を思って鞭を打つ姉の心遣いに感謝しつつ、その乱取り二百本的な特訓に、とりかかる前から心折れそうになっていた。
 普段はかわいらしい顔つきに見合った優しい性格の星雪だが、突然人が変わったように好戦的になる。
 そのとき星雪の顔つきは、邪悪さが漂うほどに変わってしまい、こうなると、兄弟の誰も星雪の暴走を止められない。
 どう猛にすら感じられる性格に星雪がなったとき、星族の兄弟は、誰も彼女に実力で勝てないからだ。

 そうこうしているうちに、星剣が星弓を起こして身支度をし、食卓に二人並んで座る。
「マルクタン神と作ってくれた星霞に、感謝を」
 今いる四人のうち、もっとも年長の星雪がそう言った後、残りの兄弟が同じく唱えて四人共が祈りを捧げ、その場は清廉な空気に満たされ、四人の朝食は始まった。

 ただ一人、迫り来る特訓の恐怖に心に嵐が吹き荒れていた星織を除き、海岸林道村に住まう人々に清々しく、穏やかないつもの朝が訪れていた。

 

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